はじめに
物事を見る解像度が低いままだと、人生も色あせて見えます。
野草に詳しくなかったら、セリやノビルは全部「雑草」として認識しますし、 昆虫に詳しくなかったら、ハンミョウもキマワリも全部「虫」として認識しますし、 二次元に詳しくなかったら、艦これも東方もウマ娘も全部同じ「絵」に見えます。
JavaとJavaScriptが同じに思えたのであれば、その人のプログラミング言語への解像度は低いのでしょう。 実際、毎日シャワーを浴びてるかどうかさえ怪しいエンジニア諸兄にとっては、風呂場に置いてあるのがボタニストでもメリットでも何の変哲もないただの「洗髪剤」であり、日常の背景に過ぎないはずです。 まぁこれについては私も人のことを言えないのですが。
さて、表題のキーマウとは「キーボード&マウス」の略です。ゲーマー用語なため耳馴染みのない方もいるかもしれません。ゲーマーたちは日夜キーマウが強いかPAD(※ゲームパッド、コントローラーのこと)が強いかを争っているような…いないような気がしますが、今回はそういった文脈は一切関係ありません。
この記事の内容は、キーボードやマウスなどの入力デバイスについてより深く知ることで、それらへの解像度を上げ、人生を豊かにしようというお話です。
キーボードの話
形状
キーボードには様々な形状があります。言うに及ばず正統派キーボードを始めとして、肩こりを軽減してくれる分離キーボード、0~9の数字があるテンキー、主にゲーマー向けの左手用キーボード、何が嬉しいのかよく分からない変態的なデザインのキーボード……それから最近だとSTREAM DECKという、ゲーム配信者向けの製品が存在感を強めている気がします。STREAM DECKにはボタンに液晶パネルがついていて、何のボタンを割り当てたのかが視覚的にわかりやすいようになっています。あとは最近筆者のTwitterにはTourBoxというクリエイター向け左手用デバイスの広告が沢山出てきているので、もしかしたら流行るかもしれません。キーボードは使用目的によって姿形を変えます。
www.beeraider.comwww.elgato.com
さて、「正統派キーボード」と一口に言っても、その中にも数多くの形状があります。 製品によってキーの数は様々で、界隈では%でキーボードのサイズ名を指し示すことがあります。フルサイズの110キー前後に対して、約何%のキー数があるかをそのまま呼び名にしています。
何のキーを残すかはキーボードによって変わるので必ずしも正しい説明ではないかもしれませんが、雑に各種を説明します。
- フルサイズ: 全部盛り
- テンキーレス(TKL): テンキーがない
- 65%: homeやpageUpの辺りが一部欠けている。F1~F12などのFunction行もない
- 60%: home系が一切なく、十字キーもない。代表的なのはHHKB
- 50%: 60%よりも記号系のキー(例えば
[
のような)が少ない - 40%: 数字行がない
- 30%: 英字+4, 5キーしかない
30%キーボードのリンクも置いておきます。 筆者は仕事で使うキーボードはフルサイズ推しで、許せるのはTKLまでです。65%以下のキーボードがどこまで実用的なのかは知りません。 ちなみにゲーマー間ではフルサイズよりもTKLの方が好まれる傾向があるようです。激しく動くマウスの可動部を広く取れるからという合理的な理由です。
ところで、キーボード選びをする時には、その形状だけを見て選べば良いのでしょうか? ハカセに聞いてみましょう。「おしえて! キーボードハカセ!」のコーナーです。
ハカセが言うには、スイッチがとても重要なようです。それではスイッチについて学んでいきましょう。
スイッチの種類と仕組み
スイッチの仕組みについての非常に分かりやすい解説は以下の動画がおすすめです。 構造の仕組みは文章で長々解説するよりも動画がずっと分かりやすいです。5分くらいなのでまずはこれを見てきてください。
ここからはこの動画内で触れられていないことについて記述していきます。
メンブレンスイッチ採用方式
動画内でも触れられていますが、メンブレンスイッチは印刷で作られるので、大量生産時のコストが安いです。印刷時に使用されるのは電気を通す「導電性インク」という特殊なインクです。安いため、ほとんどのキーボードはこのメンブレンスイッチを採用しています。 そのメンブレンスイッチを使った方式のうち主流なのが、「メンブレン式」と「パンタグラフ式」です。
パンタグラフ式は薄型のキーボードで採用されていますが、仕組み上キートップとプラスチックのパンタグラフがくっついているので、キーボードの分解清掃が難しいです。
メンブレン式の亜種として、Razorのメカメンブレンもあります。仕組みそのものはほぼメンブレン式だけれども、金属のツメがついていて、後述するメカニカルスイッチの青軸っぽい打鍵感になっているスイッチです。押した時に「カチッ」という音がするからといって、必ずしもメカニカル式とは限らないので注意が必要です。
大事なポイントは以下の3つです。大切なのでもう1回書きます。テスト頻出なのでこれだけは覚えてください。
メカニカル式
メカニカル式はキースイッチの軸の色によって打鍵感が違います。分かりやすいように、メーカーがわざわざそのように作っています。 メカニカル式でまず覚えておくべきなのは次の3種です。この3種は一般教養として入社時のSPI試験で出るレベルで、知らないと後ろ指をさされます。嘘です。
- 赤軸: 打鍵感から「リニア」とも言われる。スッと落ちるシンプルな打鍵感。シンプルイズベストで一番人気
- 青軸: 打鍵感から「クリッキー」とも言われる。カチカチいう。ザ・メカニカルスイッチな打鍵感と音がする
- 茶軸: 打鍵感から「タクタイル」とも言われる。最後まで押し込む途中に引っかかりがある
注意しなければいけないのは、「これはカチカチするから青軸だ」と断言はできないことです。先述したメカメンブレンのような引っ掛け問題が出ることもありますし、それ以前に軸の色はメーカーが勝手に決められるので、メーカーが違えば軸の色も違う可能性があります。上で挙げた例はあくまでドイツのCherry MXという最も有名なメカニカルスイッチのメーカーがそういうルールで色分けしているから一般的になっているだけで、メーカーが違えば色も違うかもしれません。例えば、Razorでカチカチするキースイッチは青ではなく緑の軸が使われています。
さて、スイッチ選びに妥協しないために、購入検討時までには追加で覚えておきたいのが次の2種です。
- 静音赤軸(ピンク軸): 赤軸に更に静音性が追加されたもの。筆者はこれが好き
- 銀軸: 浅く押しても反応するもの。高速な応答を求めるゲーマー向け
とはいえ文章で説明しても分かりにくいので、店頭で実際に触って試してみることが重要です。 参考情報としてお伝えしますが、ゲーミングデバイスの情報メディアDPQPが行ったツイッター上のアンケートでは、人気順は以下のような結果になりました。
キーボード、何軸が好き?
— 𝗗𝗣𝗤𝗣 (@DPQPGAMING) 2019年12月18日
(その他はリプライ)
さて、メカニカルスイッチの特徴として、静音赤軸などの一部を除き打鍵音がうるさいことが挙げられます。 同僚に教えてもらったのですが、その打鍵音を軽減するために、「静音化リング」なる商品も売っているようです。
ただ、見たところキートップの裏側に装着するようなので、キートップを外して洗濯機に入れたら静音化リングが取れて大変なことになる予感がします。 どうやってキーボードのメンテナンスをしているのでしょうか。もし使っている人は教えてください。
無接点方式
無接点方式はチャタリングという不具合(チャタリングについてはマウスの話の時に詳しく説明予定)が原理上起きない、壊れにくい方式です。 基本的にキーボードのフラッグシップモデルで採用されており、値段が高いです。静電容量無接点方式のキーボードで有名なのは東プレのRealforceシリーズです。 静電容量無接点方式の打鍵感はメンブレン式と同じくシリコンのラバーカップによって左右されるはずなのに、どういうわけか非常に良いものばかりです。値段が高いからラバーの品質も違うのでしょうか。
ところで、上のキーの仕組みの動画では無接点方式のうち「静電容量無接点方式」が紹介されていましたが、それ以外にもあります。近年存在感を強めているRazorのオプティカル式(光学式)です。
上のリンク先には仕組みが分かりやすいGIF画像があります。光のセンサーによってON/OFFが切り替えられる方式です。
筆者は静電容量無接点方式で有名なRealforceの荷重30gの信者なのですが、Razorの第二世代リニアオプティカルスイッチは非常に良く感じられ、家にキーボードはもう十分あるのにAmazonのセールの時にRazorのHuntsman V2を衝動買いしてしまいました。店頭で試している時に、これはキースイッチ界の黒船となるかもしれないと思いました。それくらい良いスイッチです。
それではまとめましょう。
お手入れ
デキる営業が革靴の手入れを欠かさないように、デキるエンジニアはキーボードを適切にメンテナンスします。 キーボードはトイレより汚いと言われています。普段は表面を拭くくらいで良いと思いますが、たまにはキートップを外して一気に洗いましょう。
とはいえ先述した通り、パンタグラフ式のキーボードは分解が難しいので、油断するとパンタグラフ部分が壊れかねません。パンタグラフ式に関しては無理して外さない方が賢明でしょう。 それ以外のメジャーな方式は大抵キートップを外すことが可能です。
キートップ側
キートップを引き抜くための道具を買いましょう。別にこれがなくても外すことはできますが、これがあるのとないのとでは効率が違います。Amazonで500円程度で買えるため、一本くらい持っておきましょう。
キートップをどう洗うべきかは、キートップの塗装の頑丈さによって違うと思うので一概に言うことは難しいかもしれません。衣類に洗濯マークがあるように「このキートップはこう洗ってください」という表示があれば良いのですが、残念ながらそういうものは今の所ありません。
筆者はどうやっているかというと、まずキートップを全て外して洗濯ネットにぶち込みます。
そして洗濯機に入れ、中性洗剤+手洗いモード(おしゃれ着モード)で洗濯します。中性洗剤は、トップやアタックではなく、エマールとかアクロンとかそういうものです。中性洗剤はキートップの掃除以外にも、マフラーやセーターやスーツを洗えるという副次的な使い道があって便利なので持っておくと良いでしょう。洗濯モードについては、前に一度手洗いモードじゃない通常モードで洗濯してしまったこともありますが、Realforceのキートップは頑丈なので問題ありませんでした。
そして洗濯した後は、タオル等の上でよく乾かしましょう。絶対になくさないように注意してください。キーをはめ直す時に見つからないキーがあると、1時間ほど部屋中を探し回った筆者のように辛い思いをします。結局電子レンジの下から出てきて一命をとりとめました。テンキーの6でした。
ただ、洗濯機で洗う方法は、塗装によってはキートップの印字がかすれたり、素材によっては破損する可能性もあるかもしれません。筆者は責任を取れないのであくまで自己責任で洗濯機にぶち込んでください。筆者は洗濯機で全然問題はありませんでしたが、怖い人は手洗いするか……楽をしたいなら超音波洗浄機などで洗うのが良いかもしれません。
本体側
キートップを外すと、きっと引くほどの汚れが可視化されるでしょう。下のきったないキーボードの無修正画像はお恥ずかしながら筆者のキーボードです。
ここまで汚いと普通に掃除機をかけます。掃除機をかける前に、取り外せるバネなどが残ってないことをよく確認してください。
そしてある程度大きなホコリが取れたら、無水エタノールを綿棒やキムワイプにつけて隙間やフレームを掃除します。
キムワイプはどのご家庭にもあるので説明不要ですが、エタノールについては少し注意点があります。
無水エタノールはすぐに揮発するため水が使えない掃除の時に便利なのですが、アルコールなので当然火気厳禁です。 それからアルコールだからといって余ったエタノールを飲むことはできません。不可飲処置が施されたアルコールは酒税が課されないようになっているので、飲むと体調を崩すような物質が意図的に入っている可能性があります。
それからエタノールは何にでも使える万能な掃除用品では決してありません。掃除できない素材もあります。 例えばエタノールを、ニスが塗られた床にこぼすと床が真っ白になります。言うまでもなく賃貸でこれをやると大変なことになります(経験談)。 アクリル樹脂やゴムも白くなってしまうので使ってはいけません。他にも使ってはいけない素材はあるので、よく調べてから使う必要があります。 掃除で使用する前に、無水エタノールを製造している健栄製薬の以下のリンクを必ずご一読ください。
キーボード掃除の総括
キーボードは少し見ないうちに引くほど汚れが溜まっているので、皆さんも定期的に掃除をしましょう。
続いて、マウスのお話です。
マウスの話
なぜマウスなのか
キーボードにこだわる人は多い一方で、マウスにこだわる人はエンジニアの中でも不思議なほど少ないように思います。
MacBook標準のトラックパッドを使っている人や、ThinkPadの赤ポチ(※トラックポイント)が好きな人や、トラックボールユーザー(筆者はトラックボールのことは宗教だと思っているのであまりトラックボールユーザーに近寄らないようにしている)や、エレコムやダイソーの激安500円マウスを使っている人さえも……。色んな人がいます。
正直、信じがたい。
マウスにこだわるべき理由があります。
- Webアプリケーションエンジニアの日常的な仕事において、画面のマウスカーソルを動かすことはよくある作業である
- マウスカーソルが最も自分の思い通りに動かせるのは、FPSゲームをプレイするときにも採用されるマウスである
- 1,2より、Webアプリケーションエンジニアはマウスを用いるべきである。
マウスの機能
マウスはキーボード以上に機能面での差異が多いので注意が必要です。この記事ではあくまで仕事で関係しそうな仕様のみ紹介します。
リフトオフディスタンス (Lift-off Distance, LoD, リフトオフレンジとも)
高いマウスと安いマウスの決定的な違いは、マウスに搭載されているセンサーです。LoDはそのセンサーの良し悪しによって値が変わります。
LoDとはマウスを持ち上げた時にセンサーが届かなくなる距離のことです。 マウスパッドによって0.1~0.5mmほど変わるためか、メーカー側は仕様として記載しないことが多いため注意が必要です。 ポケモンに個体値や努力値があるように、マウスにも隠しパラメータがあるのです。
誤動作を防ぐためには、ちょっとでもマウスを浮かせたらカーソルが停止して欲しいです。 そのため、このLoDは小さければ小さいほど良い値です。個人的には最低2mm以下であって欲しいです。
メーカーの仕様に書かれていないのにどうやってこのLoDを判断したら良いのか、疑問に思う方もいるでしょう。 判断の方法は簡単です。LoDが長い「ゲーミング」マウスを掴まされてしまった可哀相な人が個人ブログでブチギレているので、そういった外部の情報を参考にするのです。
人によってはマスキングテープなどでLoDを調整する人もいるとか、いないとか……。
マウスホイール
マウスホイールにも機種ごとに差異があります。①〜③は画像があります。画像は筆者の最推しのマウス、Logicool G604です。
- ①中央クリック
- 説明不要だと思いますが、ホイールが押せる機能です。無いと人権はありません
- ②ティルト機能(チルト機能とも)
- ホイールを横に傾けて押せるボタンです。かなり地味な存在ですが、なぜか搭載機種は多いです。この機能がついているホイールのことを「チルトホイール」といいます
- ③高速スクロール
- ボタン切り替えでホイールが物理的に高速に回転できるようになる機能です。一部のマウスにしかついていませんが、あると最高です。これがあれば, homeキー, endキー, ハンドスピナーは不要になります
- ④MagSpeed
- 電磁石の力によって低速回転と高速回転を両立できます。Logicoolの非ゲーミング系の極一部のマウスにしかついていません。ゲーミング系のモデルには残念ながら無いのですが、理由は多分構造上ティルト機能がつけられないからなんじゃないかなと勝手に思っています(ティルト部分に別のキーを割り当てたい需要があるため)
- ⑤サムホイール
- 親指辺りについていることが多い2つ目のホイールです。逆にこれがある時は、メインのホイールにはティルト機能がついていないと思った方が良いかもしれません
プログラマブルなボタンの数
頻繁に使うキーやショートカットをボタンに割り当てられる機能です。マウスを買うと、Logicoolの製品ならG HUB(Logicoolゲーミングソフトウェアの後継)、RazorならSynapse 3というソフトウェアが付属してくるのですが、それらのソフトウェアを使用することで割り当てを変更することができます。
例えば筆者の最推しマウス、G604には親指の側に6つのボタン、左クリックの側に2つのボタンがついています。これらの場所に新しいキーバインドを割り当てることができるのは当然のこと、通常のクリックや中央クリックなどにも別のキーバインドを割り当てることも可能です。(※ただし、このG604は高速スクロールのボタンとBluetooth切り替えボタンの位置には他のキーを割り当てることができないので注意してください)
Macでおすすめの腐りにくいショートカットは以下の通りです。
- すすむ(Cmd + →)
- 戻る(Cmd + ←)
- タブを閉じる(Cmd + W)
- ウィンドウを閉じる(Cmd + Q)
- デスクトップを表示する(F11)
「タブを閉じる」は特におすすめです。
とはいえ8つくらいじゃボタンが全然足りない人もいると思います。 そういう人にはRazorのNaga Proがおすすめです。側面に12個のボタンがある数少ないワイヤレスマウスです。 117gという多ボタンマウスにしては軽いマウスですが、お値段も驚異的で17,000円(執筆時点)もします。
更に軽いマウスもごく最近出ました。Aerox 9 Wirelessです。89gという(多ボタンマウスにしては)超軽量なモデルです。値段はNaga Proよりも高く18,000円(執筆時点)くらいです。
「18,000円は流石につらい...」という方は、有線マウスのG600tという選択肢もあります。Naga Proの半額以下で買えます。
有線マウスであるけれど無線マウスのような感覚で扱いたい! というワガママな人のために、マウスバンジーという有線ケーブルを浮かせるための製品もあります。 バカみたいに思うかもしれませんが、世のゲーマーたちは大真面目です。
形・重さ・大きさ
かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち、人によってマウスの持ち方は異なります。そして、人によって手の大きさは異なります。更に、好きなマウス感度も異なります。 ゆえに、人によって好むマウスの形・大きさ・重さは千差万別です。ネットで見た画像だけで買うと、どんなに高級なマウスを買ったところで「思ったのと違う……」となってしまいがちなので、店頭で実際に触って試すのがおすすめです。秋葉原には実際にマウスを触れるお店がたくさんあります。
一般的なマウスは90g前後です。例えば伝説のマウスIntelliMouse Explorer 3.0に似せて作られたとされるLogicoolのG703hは95g、RazorのDeathAdder V2 Pro は88gです。
特に軽いマウスだと、Finalmouseというブランドが先駆けとして有名なのですが、ここのモデルはどれも40g前後の驚異的な軽さです。軽量化のためにボディに穴がたくさん空いているのが特徴です。集合体恐怖症の方には辛いかもしれないデザインです。 Finalmouseのみならず、最近はこういった穴の空いた軽量マウスが各社から登場しています。
逆に重いマウスの例だと、何度か登場している筆者の推しのG604は135gです。 最重量級だと、PCケースで有名なメーカーであるCooler Masterが出したMM830というマウスが162gです。マウスに有機ELディスプレイがついた変態モデルです。
https://www.coolermaster.com/jp/ja-jp/catalog/peripheral/mice/mm830/www.coolermaster.com
DPIやポーリングレート(レポートレート)
マウスのスペック欄に書かれていますが基本的にゲーマーにしか関係ないため、本記事では扱いません。 雑に言うとDPIは感度で、ポーリングレートはどれだけカーソルがぬるぬる動くかです。Bluetoothで接続する場合はポーリングレートが125固定になるのでご注意ください。
その他の機能
他にも機能には差異があります。以下はその一例です。
- 電池かバッテリーか(どちらにもメリット・デメリットはある。筆者は電池派)
- Bluetoothの有無(※無線マウスであってもBluetoothが使えるとは限らない。それからBluetoothは遅いのでゲーム向きではない)
- Powerplay(Logicool): 専用マウスパッドに乗せていれば充電がされる
- Flow(Logicool): 複数台のパソコンを1台のマウスで操作できる
- ガラス面で操作できるか
マウスは機種ごとに特色が強く、「機能全部盛り」な機種はありません。 自分に合ったものを見つけ出すのが大切です。
マウスの修理
キーボードではキーボードの掃除の話をしましたが、マウスでは修理の話をします。なぜかというとマウスは頻繁に壊れるデバイスだからです。 特にゲーマーはマウスを使いまくるので、使用時間にもよりますが、筆者は2年半〜4年くらいでマウスを壊してしまいます。2年半も経ったら当然保証は切れています。
以下のような故障例があります。
チャタリングとは?
キーボードの項目でも少しだけ登場しましたが、チャタリングはスイッチで発生する不具合です。 実際は1回しか入力していないのに、マシンには2回以上入力があるような状態です。
チャタリングが起きると、右下の図のように、電圧が短い時間で0と1を行き来します。これによって、一度しかクリックしていないのにダブルクリックになる現象が起きます。
勝手にダブルクリックになって何が困るかというと、例えばデスクトップ上にあるショートカットのファイル名を変更しようとしただけなのに、アプリケーションが起動します。ウィンドウをちょっと動かそうとしただけなのに、画面全体にウィンドウが固定されます。つまり、最悪です。
チャタリングの原因はいくつかあります。
- 静電気
- 電池の劣化
- スイッチの接点不良
- ゴミの付着
- 金属疲労でスイッチが少し折れてる
スイッチの接点不良だった場合は厄介です。とうとうこの時が来てしまったか……と覚悟を決めて何かしらのアクションをとる必要があります。
マウスで使用されるスイッチ
キーボード同様、マウスにもスイッチが存在します。使用されるスイッチには大きく分けて2つの種類があります。マイクロスイッチとタクトスイッチ(タクタイルスイッチ)です。
押すとカチカチいうのがマイクロスイッチで、ポコポコいうのがタクトスイッチです。だいたい左右のクリックに使用されるのがマイクロスイッチで、マウスホイールのクリックに使われているのがタクトスイッチです。もちろんどこに何のスイッチを使うかは製品によって違うので必ずそうとは言えませんが、だいたいそれで合ってると思います。
一部例外はありますが、基本的には普通のマウスでもどんな高級マウスでも、似たようなマイクロスイッチとタクトスイッチが使用されています。もちろんスイッチのメーカーによっては比較的耐久性の高いスイッチもありますが、それでもキーボードに比べると寿命はそう長くないような気がします。マウスはスイッチ数がキーボードに比べて少なく、その分一つ一つのスイッチにかかる負担が大きいからそう感じるのかもしれません。
スイッチの見た目や構造については以下のブログ記事に載っている画像が分かりやすいです。
接点復活剤(コンタクトスプレー)での修理
マイクロスイッチ(左右のクリックに使われることが多い)でチャタリングが起きた場合で、且つスイッチ内の金属の板ばねが折れていない状態であるならば、接点復活剤で直る可能性が高いです。 接点復活剤は揮発性+有毒なので、換気して作業しましょう。
マイクロスイッチはスイッチの小さいカバーを開けなくても、ボタンの隙間から接点復活剤を流し込めばいけます。 カバーを開けて直接スプレーする方法もありますが、マイクロスイッチのカバーを開けるのはかなり大変です。カッターの先っちょとかで頑張って開けようとしても、下手するとプラスチックの小さなツメが折れたりします。
これはマイクロスイッチの話で、タクトスイッチでチャタリングが起きたら流石に交換修理しかないのでは? と思っていますが、詳しくは知りません。詳しい人いたら教えてください。
スイッチの交換修理
マイクロスイッチでもタクトスイッチでも、金属のバネにひび割れなどの異常が発生している場合は、接点復活剤ではどうにもならず交換修理するしかありません。 どのご家庭にもあるとは思いますが、ハンダとハンダゴテを用意してください。あとハンダ吸い取り線は絶対必要なので必ず用意してください。他にも、フラックス(溶けたハンダの液をサラサラにするため)や万力(パーツを固定して作業するため)があると便利です。
交換先のマイクロスイッチもタクトスイッチも、それぞれのマウスに合ったものを選ぶ必要がありますが、だいたい修理の先人がYouTubeに修理動画を上げてくれているので、パーツ選びはそれらの動画を参考にすると良いと思います。大変有り難いですね。もし動画が無かったら自力で似たパーツを探すしかありません。
マイクロスイッチの交換修理をしている例
タクトスイッチの交換修理をしている例
参考になる修理動画は沢山あるとはいえ、かなり繊細な作業なので直るかはあなたの腕次第です。 腕に自身があるならば、ハードオフなどでジャンクマウスを買ってきて修理して使う手もあると思います。
え、そこまでする……?
修理で「ハンダ付け」なんて言うと、「有償修理に出すか新しいの買えば?」と思う人も少なからずいるでしょう。 マウスによっては新品の定価はそれなりにするので、スイッチ一つの故障で捨てるのは勿体ないのはありますが、それ以外にも修理方法を覚えるだけの理由があります。
1つ目。Logicoolは保証期間外の有償修理を受け付けていない。(※Logicool公式では修理サービスは今日(2022-04-12)時点では存在しないが、外部のサービスで修理を請け負ってくれる業者はいる。ただし、そういったサービスが常に存在するとは限らない)
2つ目。どんな製品もそのうち生産は終了する。そして、生産終了した製品は新品の値段がつり上がっていたり、そもそも売っていないことがある。
さて突然ですが、ここで筆者の推しの歴史について話していきましょう。
推しの歴史
まず始めに、G700というマウスが2010年に発売されました。その当時は"Logicool G"というゲーミングブランドはまだ存在していませんでした。画像を検索してもらえたら分かりますが、G700sと同じ形状の多ボタンマウスで、今でこそ「ゲームっぽい」見た目のマウスに思えますが、当時は「プロクリエイター向け高性能・多機能ワイヤレスマウス」という位置づけで発売されていました。
筆者はこのマウスの後継にあたるG700sから使い始めました。G700sは2013年、Logicoolのゲーミングブランド創設と同時にリリースされました。G700と中身は一緒でしたが、塗装が一新し、尖りすぎてダンゴムシみたいと評される模様がつけられました。このマウスも高速スクロールが搭載された非常に使い心地が良いワイヤレスマウスだったのですが、バッテリーが1時間で切れる決戦兵器仕様だったため、ほとんど常に太ましい電源ケーブルをつけて運用していました。友達からは「エヴァンゲリオンかよwww」とさんざんバカにされましたが、それでもこのマウスを使うと他のマウスが使えなくなるほど良いマウスでした。
しかしG700sは2016年前後に生産が終了し、世はG700難民で溢れかえります。長い冬の時代です。 誇張ではありません。その証拠に、Googleに"G700s n"まで入力すると、"G700s 難民"とサジェストされます。
生産終了したG700sの新品の価格は高騰し、定価の数倍の値段になっていました。「流石に消耗品のマウスに4, 5万も出せない」と価格に尻込みしたG700ユーザーは、2013年に発売されたG602というボタン配列がよく似たマウスに手を出します。しかしこのマウス、姿形は似ていてもG700とは全く性質の異なるマウスだったのです。まずマウスホイールに高速スクロールが搭載されていない。そして最高ポーリングレートがG700の半分で、LoDも長い。しかし一方で、充電は一ヶ月も持つ省電力なマウスだったのです。G700ユーザーたちの間ではG602を後継機として認めるかどうかで意見が割れ、妾の子供を皇太子に認めるかどうかの話をする面倒臭い家臣みたいになっていました。「G700 後継機」とかで調べると、G700難民たちが色んなマウスを比較検討していた様子が今でも分かります。
その長い冬の時代を終わらせたのが2019年11月に発売されたG604です。G700のような最高の使い心地なのに、更にG602のような省電力を兼ね備えた史上最高のマウスです。 135gと重いので一般の方には敬遠されがちかもしれませんが、何も問題ありません。ENDGAME GEARのMPX390のような滑りの良い高級マウスパッドの上に乗せて、マウス感度を少し上げれば全てが解決します(※要出典)。問題があるとすれば、マウスパッドの値段がマウスとほぼ同じかそれ以上ということくらいでしょうか。皆さんが買ってくれたらLogicoolさんがまた新作を出してくれると思うので、是非買ってください。
さて少し話がそれましたが、筆者は推しの話をしたかったわけではありません。「推しにいつでも会えると思ってはいけない」という話がしたかったのです。自分に合ったマウスが常に入手できるとは限らないので、特殊なマウスを愛用する人は、自力で修理できる力を身に着けておくといつか役に立つよというお話でした。
結論
スイッチの構造を学ぶことで、キーボードやマウス選びの参考とするだけでなく、故障時の原因発見と復旧の方法に検討をつけることができると分かりました。この記事でそれが伝わったら幸いです。分解や修理は自己責任なので、メーカー保証が切れていて、かつ有償修理に出す気もない時にやりましょう。
最後に
この記事の内容は独断と偏見に満ちており、内容は筆者一個人の考えに過ぎません。ご了承お願いします。業務時間内に役に立つ知識はあまりなかったかもしれませんが、エンジニア生活の知恵を少しでも持って帰って頂けたら幸いです。
なお、この内容はRuby生みの親まつもとゆきひろ氏の前でもLTしたのですが、まつもとゆきひろ氏はIBMのSpace Saver(トラックポイントがついたキーボード)を買うレベルでトラックポイントが好き+トラックボールユーザーだったので、それらをディスっている筆者は無事死亡しました。